昨日の金市場は、4,000ドルを割り込んだ後に反発へ向かう、値幅の大きい一日になりました。
直前まで金は、ドル高とFRBの利上げ観測を背景に売られていました。金は利息を生まないため、米国債利回りが高く、ドルが強い局面では保有の魅力が相対的に下がりやすくなります。
ところが、米PCEが市場予想を大きく上回らなかったことで、ドルと米金利には一服感が出ました。その結果、金には買い戻しが入り、価格は4,000ドル台へ戻りました。
ただし、この反発を「金の下落が終わった」と見るのは早いでしょう。米国の物価上昇はなお高く、FRBの高金利姿勢が消えたわけではありません。6月26日の金市場では、4,000ドル台を回復したことより、その水準を維持できるかが重要になります。
昨日の金は「売られ過ぎ」からの買い戻しだった
- 金は直前に4,000ドルを下回る場面がありました。
- 米PCE後にドルと米国債利回りが低下し、金は4,000ドル台へ反発しました。
- 反発の背景は、インフレ懸念の完全な後退ではなく、利上げ観測の一服です。
- 中東情勢の緊張緩和と原油安は、安全資産需要を弱める一方、インフレ懸念を和らげる材料でもあります。
- 今日の焦点は、4,000ドル台で買いが継続するか、それとも戻り売りが優勢になるかです。
なぜPCE後に金は反発したのか
金はドルの動きに影響を受ける
国際金価格はドル建てで取引されます。
ドルが強くなると、日本円やユーロなどで金を買う投資家にとって、購入コストが上がります。金価格が同じでも、通貨の変化によって金が高く見えるため、需要が弱くなりやすいです。
反対に、ドルが少し下がれば、海外投資家から見た金の購入負担は軽くなります。昨日のPCE後に金が買い戻された背景には、ドル高の勢いが一服したことがあります。
金にとって、ドルの下落は直接的な追い風になりやすいです。ただし、ドルが長期的な上昇局面に残っているなら、一日のドル安だけで相場の方向が変わったと決めつけることはできません。
米国債利回りの低下は機会費用を下げる
金は利息や配当を生みません。
米国債の利回りが高いとき、投資家は比較的低いリスクで利息を得られます。そのため、利回りを得られない金を持つ理由は弱くなります。
しかし米金利が低下すれば、金を持たないことのメリットは小さくなります。投資家は利息を受け取る債券だけでなく、通貨価値の変化、金融市場の不安、資産分散のために金を持つ意味を考えやすくなります。
昨日の反発は、金の需給だけでなく、「金を持つ機会費用」が少し下がったことによるものです。
4,000ドルは単なる数字ではない
節目には短期資金と長期資金が集まりやすい
4,000ドルという水準は、多くの投資家にとって分かりやすい心理的な節目です。
高値圏で買った投資家は、4,000ドルを回復した場面で損失を減らすために売るかもしれません。短期トレーダーは、節目を超えたかどうかで売買を判断します。長期投資家は、価格調整を資産分散の機会と考えることがあります。
異なる投資家の判断が集まるため、節目の近くでは値動きが大きくなりやすいです。
大切なのは、4,000ドルを一時的に回復したかではありません。回復後に価格を維持できるか、下げても安値を切り上げられるかです。
反発後に戻り売りが出るかを見る
急落した資産は、短期の買い戻しで反発することがあります。
売りポジションを閉じる買い、割安と考えた短期資金の買い、節目での自動的な買い注文。こうした要因で、価格は一時的に戻ることがあります。
しかし反発した後に売りが出れば、市場にはまだ高値で売りたい参加者が多いことになります。逆に、価格が4,000ドル台で安定し、押しても買いが入るなら、短期の売り圧力は弱まり始めたと判断しやすくなります。
今日の金市場では、反発の高さよりも、反発後の安定感が重要です。
中東情勢の変化は金に二つの影響を与える
原油安はインフレ不安を和らげる
中東情勢がひとまず落ち着き、原油価格が下がれば、企業の輸送費や家計の燃料費への圧力が和らぎます。
米国にとっても、原油安は物価上昇の勢いを抑える方向に働きます。エネルギー価格が落ち着けば、FRBが追加利上げを急ぐ必要性は小さくなります。
この意味では、原油安は金にとって間接的な追い風です。米金利が上がり続けるという懸念が弱まれば、金の機会費用も小さくなるからです。
安全資産需要は弱くなる可能性がある
一方で、地政学リスクが落ち着けば、金を急いで買う必要性は弱くなります。
戦争の拡大、海上輸送の混乱、エネルギー供給の停止といった最悪の想定が遠のけば、投資家は安全資産として金を持つ比率を下げることがあります。
つまり、中東情勢の緊張緩和は、インフレ面では金にプラスでも、安全資産需要の面ではマイナスになることがあります。
金が単純に上がりにくいのは、この二つの力が逆方向に働いているからです。
円建て金価格ではドル円が重要になる
国際金価格が反発しても、円建てでは見え方が変わる
日本の投資家にとって、金はドル建て価格だけで決まりません。
ドル建ての金価格が上がっても、円高が進めば、円建て価格の上昇は抑えられます。反対に、ドル建て金価格が横ばいでも、円安が進めば国内の金価格は上がることがあります。
現在のようにドル円が161円台後半にあるなら、国際金価格が少し下がっても、円建て価格は下がりにくくなる可能性があります。
金を日本円で考えるときは、金相場と為替相場を別々に見るのではなく、二つの価格が重なっていると考える必要があります。
今日の金市場で確認したいこと
- 金が4,000ドル台を維持できるか。
- ドル指数と米国債利回りがさらに低下するか。
- FRBの追加利上げ観測がどこまで後退するか。
- 原油安がインフレ見通しの改善につながるか。
- ドル円が円建て金価格をどこまで支えるか。
今日の見解
昨日の金の反発は、ドル高と高金利への警戒が少し和らいだことによる買い戻しと見るのが自然です。
最大材料は、米金利とドルの調整が一時的で終わるのか、それとも金を持つ機会費用を下げる流れへ変わるのかです。焦点は、4,000ドル台での値持ち、ドル指数、米国債利回り、円建て価格です。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金地金、ETF、投資信託、金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。